映画『箪笥』徹底解説。全ての謎の解明と母親の自殺に関する考察。《後編》
映画『箪笥』の《後編》、解説や考察がメインです。
未視聴の方は映画紹介ページの《前編》へどうぞ。
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映画全ての疑問点が解消されることを目的とした記事となっておりますので、かなり長いです。
また、映画の中で視聴者が抱くであろう謎の真相は大抵映画の中に答えがあるのですが、幾つか答えが映画内で明記されていない謎もあり、それらを筆者なりに解釈した深読み考察も記しております。こちらは生ぬるい目線で読んで頂けると幸いです。
小説版で語られた真実も合わせて解説していきます。
映画、小説、共にガッツリとネタバレしていきますのでご注意ください。
物語の真相
※画像がグロめのヤツあります…!
<b>あの日の真相</b>
-ウンジュが主催した食事会でスミとスヨンは出席を拒否します。
その後、スヨンは二階の母の部屋で母親に泣きつく内に眠ってしまう。
その間に母親はタンスで首をつって自殺。
目覚めたスヨンは首をつった母親を見つけ、何とか助け出そうと試みるも、倒れてきた箪笥と母親の死体に圧迫されもがきます。
その音を聴きつけたウンジュが現場を目撃しますが、見なかったことにしようと一度その場を離れる。
しかし自分の行動が怪しまれると不味い、と戻ってきたところを自室から出てきたスミと遭遇。
スミは大きな音の出所の確認よりウンジュから離れることを優先したため、その時まだ生きていたスヨンを助けることができなかった。
この時自らの怒りを自制し、ウンジュに対して喧嘩腰で話しかけることをしなければスヨンを助けることができていた。
また、ウンジュもスミと同様カッとなりやすい気質なため「この瞬間のことを一生後悔するわよ」とあたかもスミがスヨンを見殺しにした、という様なことを言い放ってしまう。
この時スミは“ウンジュと口論したことに対する後悔”だと受け取ったが“母親の部屋を見に行かなかったことに対する後悔”ともとれる台詞であったため、物語終盤で現実を受け入れた時、ウンジュはスヨンが死にかけていることを知っていて、自分をスヨンから遠ざけたのではと思うようになる。
その後、 ウンジュは病院でスミに手を締め上げられ、自分がスヨンを見殺しにしたという事実に気づかれたのではないかと危機感を覚える。
家に帰ってきたウンジュは一人頭を抱えて思い悩んでいたが、不穏な気配を感じとり、スヨンの部屋で母親の幽霊から報復を受けてしまう。
登場人物ごとの解説
スミ
- 二重人格、ウンジュを演じてる。本人は気付いていないが、病気の治療のために父親と家に帰ってきた。
- 家では、“あの日”の出来事を自分の中で捏造するため、《体調を崩していたスヨンをウンジュが虐める》といったストーリーをスミとウンジュ、二つの人格によって進行していく。
- このように精神をきたしてしまったスミに、父親は精神病院と帰省を今まで何度も往復して事実に気付くよう差し向けるがどれも失敗に終わっていた。
- しかし今回の帰省では、幽霊に遭遇したり、母親の遺品を入手したりと、今までにない展開を迎えながら、自らを守るための妄想が激化していく。
- “あの日”に起きた自らの過ちを認めることができるか、幽霊に翻弄されながら、妄想に妄想を重ね、目を背け続けてきた真実に近づいていく…これが映画の本筋となっている。
ウンジュ(二重人格であるスミが演じている)
- スヨンを虐める継母という設定でスミが演じているウンジュ。父親には当然スミ本人の姿として見えているし、本物のウンジュはラストシーンでスミの前に登場する。
- 基本的に二人の人格の切り替えはスミがコントロールしているが、次第にスミはウンジュの人格に主導権を握られていき、真実を思い出した後は、それを認めることを拒み、ウンジュの人格に主導権を明け渡してしまう。
が、結局本物のウンジュが登場したことにより、ウンジュの人格は消え、スミは現実を受け入れざるを得なくなり、精神病院に逆戻りする。
スヨン(スミだけに見える幽霊)
- 一見スミの三つ目の人格のように思えるが、実は幽霊である。繰り返されるスミの帰省の中、あたかもスヨンが実在ようにスミが演じるため、幽霊のスヨンが自分がまだ生きていると勘違いしている。(小説版で明かされた真実)
- おそらく初期の段階で行われた帰省ではウンジュと同じようにスヨンのこともスミが演じていた。
- スミに見える→スミが演じるウンジュにも見えている。しかし、父親には見えていない。
- 中盤で「母から聞いた」と母を呼び出す謎の呪文を唱えるが、それが何だったのかは謎のままである…
- 終盤で父親の口からスヨンが既に死んでいるとスミを諭すシーンに立ち会い、自身を幽霊だと認めたのか、それ以降は姿を現さなくなる。
スヨン(生きてる)
- “あの日”自室の箪笥で首吊りをした母親を助けようとして倒れた箪笥に潰され死んだ
- その日つけていた髪飾りがウンジュにぶたれてシンクの下に落ちてしまった、というシーンがあったが監督によりカットされてしまった。その髪飾りが中盤にキッチンで登場する。
ウンジュ(実在する方)
- 事故があった数年前から、具合の悪い母親の看病をするため家に住み着いていた父親の同僚の看護士
- “あの日”スミの態度に腹を立てスヨンを見殺しにした
- スミの帰省の間は家から出ている
中盤で登場する母の遺品の写真から、父親が若い頃に付き合っていた相手だと仄めかされる
- 終盤で母親の幽霊に復讐された
父親
- スミが正気を取り戻すまで、自宅への帰省を繰り返している
- 母親の病気の進行と共に、母親への気持ちが離れていっていた。ウンジュと不倫関係にあったかどうかは微妙なところ。
母親(実物)
- 箪笥で首吊りをして死んだ
- その箪笥から薬品が出てくることから何らかの病気だったと思われる
- 事故の日は何らかの理由で食事会に参加しなかった
- 遺品の写真から、母親は自分の看護をしている女が父親の過去の女だと気付いていたことになる。
母親(幽霊)
- 序盤で箪笥から出て来てスヨンを驚かせた
- スミの前に現れた時には股から手が出てきた。
- 終盤でウンジュに復讐を果たす。
(その際スヨンの部屋の人形や、透明な粘液の様なものが不自然にカットインされる。ここからは完全に筆者の深読みだが、母親は以前、看護師だった頃のウンジュの手により流産させられたのでは?
また、そのウンジュが夫と昔付き合っていたことを父親が保管していた写真から知ることになった。時系列はわからないがそんな感じの因果があって、自殺。スヨンの呪文によって呼び起こされ、ウンジュに復讐をしたとか?その辺の答えが分かるかた是非教えてください。)
ソンギュ夫婦
- 左側、ウンジュの弟のソンギュ、食事会ではスミ(ウンジュ)の妄想話を真っ向から否定した
- 右側、ソンギュの妻ミヒ、スミの奇行に動転し持病の発作で倒れたところ、スヨンの幽霊を目撃してしまう。不運。
- 小説版曰くウンジュは魚の生ゴミを冷蔵庫で放置したりしていたとか、その行為にスミは『ママなら絶対にそんなことしない!キッチンはママの聖域なのに、勝手に使うなんて許せない!』と不満を抱いていたらしい
小鳥
- ウンジュの小鳥。一羽はスミに殺され鳥籠に入れられていたところを、父親に発見され埋葬される。もう一羽はスヨンの部屋のベッドでウンジュの膝に潰される。スミが小鳥達を殺した理由は、『スヨンが小鳥を隠したためにウンジュが激昂しスミを箪笥に閉じ込めて殺した』という妄想をするため、不運。
ストーリーの解説
上記の真相や登場人物の設定を踏まえ、冒頭からシーンごとに解説します。
『』はスミ、「」はそれ以外の人物の台詞で表記
オープニング、病院でのカウンセリング
医師「今日はどうだった?楽しかったかい?
さあ、これから少し話をしよう、まずは自己紹介からだ、自分は誰だと思う?」
- カウンセリングを受けているのはスミなのだが、話さないし顔も見えないため、視聴者はこの時点で少女がスヨンなのかスミなのか分からない
- 「今日“は”どうだった?」という台詞から、毎日何かを繰り返しているという伏線
- また、少女に自己紹介が必要なことから、自己認識がおかしくなる精神病であり、二重人格であることが仄めかされている
医師「それじゃああの日のことについて、話してくれるかな?一体何があったのかな?はっきりと覚えているはずだけどね。
大丈夫、あの日に何が起きたのか話してごらん」
- 実際には事故があった“あの日”の事を話しているが、視聴者に対して、こらから流れる映像が“あの日”であるかの様にミスリードしている
家での治療
父親が運転する車で家に帰ってきたスミ。
「出てこないのか?スミ」
車から出た父親が話しかける。
- この時点で父親はスヨンを気にかけていないので、彼女が実在していないことの伏線が張られる
車から出たスミは一瞬、ブランコと二階の窓を見やったが、すぐにスヨンを呼び門の外へ駆け出して行った
- スヨンと母親が死んだ部屋を見上げ、“あの日”スヨンと一緒に家を飛び出せたら良かったのに、とでも思ったのだろうか。“あの日”できなかったことをするために、スミはスヨンを連れて桟橋へ駆けてゆく。
- この後スミとスヨンが桟橋で水遊びしているが、エンドロールでは桟橋に一人座るスミが写し出される。一連の演出にスミが感じていた後悔が垣間見得える。
- 視聴者の精神を抉る素晴らしい演出でした。
ウンジュの登場シーン
家に入った二人はウンジュから声をかけられる。
「あーら貴方達〜、久しぶり、よく来てくれたわね〜、あら、スヨンったら随分綺麗になって。体調良さそうね、元気になったようで嬉しいわ」
- ウンジュ(スミのもう一つの人格)登場。スヨンに話しかけるため、先程とは一転スヨンが実在するように見せるミスリード。
- さらにウンジュがスヨンの体調について話すので、冒頭でカウンセリングを受けてたのはスヨンだったのでは?と初見の視聴者を二重にミスリードしてる。
重複する私物
自室へ入ったスミがカバンの荷物を整理していると、机の中に自分が鞄から出したノートと同じノートが入っている。
驚いた表情の後、何かに気づいたように箪笥を開けると、そこには同じ服が何着も入っている。
- 今日はどうだった?という伏線の答え。正気に戻るまで何度も家への帰省を繰り返していることがわかる。
- これを仕掛けているのはおそらく父親で、スミが帰省を繰り返していることに自分で気づけるように、毎回同じものを渡してる。
- しかしスミの妄想は毎回リセットされるため、スミ自身も驚いていて、この後食事のシーンでウンジュのせいにする。
夫婦の寝室
ウンジュが父親の下着を用意するが、すでに用意されていた。
- おそらく父親が自分で用意していた。
- この後ウンジュはこれをスミの仕業とし、スミは重複する私物をウンジュの仕業だと思い込み言及するが、ウンジュとスミは何故そのようなことが起こってるのか知るはずもなく結局解決には至らない。二人のスミは尚更混乱していく。
父親の電話
「ああ、さっき家に着いた、あまりいい状態だとは言えないな。だからお前は来なくていいよ。」
「ソンギュが夫婦で来る予定だ。大丈夫だよ、俺に任せておけ、じゃあな」
- ソンギュ夫婦(ウンジュの弟夫婦)のことを知っている誰かが話し相手、フランクな話し言葉からも、電話相手は本物のウンジュだと思われる。
四人の食卓
ウンジュ「ああそうだ、今度の週末、ソンギュ夫婦を招待しようと思ってるんだけど」
父「そうか、……ごちそうさん、俺は先に書斎に行ってる」
父親はずっと誰とも目を合わさないまま席を立つ。
その後三人の食事シーンが続く。
ウンジュ「パパの下着はあなたが出したの?でもそれは私の仕事よ」
『私の部屋のものに勝手に触らないで』
ウンジュ「私は何もしてないわ」
『じゃあ何故同じ服が何十着もあるの』
直後答えに戸惑ったウンジュの手元に父親が薬を置く。
- 実際には一人で会話をしているスミを心配した父親が薬を渡した。視聴者にはウンジュが精神を病んでいるようにも見えるミスリード
- 父親の下着は父親自身が出したもので、スミの同じ服も父親が用意したもの。全て父親の行為だがスミとウンジュは混乱している。
食事を終えたスミがスヨンに言った台詞
『あの女から何か言われたら、ちゃんと私に話して、わかった?』
父親がソファで寝る意味
ウンジュは夫婦の寝室で小鳥の世話をした後、口紅を落とし、ベッドを整え父親を待つ。
父親が部屋に入ってきて、最初は後ろから抱きながら眠るがそっと仰向けになり、ベッドを抜け出し書斎のソファで寝る。
- スミはウンジュを演じるために夫婦のベッドへ入ったと思われる。(筆者はスミの父親恋慕説に対して否定的)
- この段階で父親はスミが自発的に真実へたどり着くことを期待している為、ベッドでウンジュのように振る舞うスミにも仕方なく付き合っている。しかし娘と同じベッドでは眠れず移動した。
その後目を覚ましたウンジュは父親がいないことに気付き布団から出る。
- ウンジュはこの後スミとしてスミの自室で眠っていたところ、幽霊の出現に怯えたスヨンと自室で合流したと考えられる。
スヨンの部屋の箪笥の幽霊
スヨンは箪笥の中から手が出てくるのを見て怖くなり、布団を頭までかぶり直した。しかし足元から布団を幽霊に引っ張られているのか、再び布団から顔が出てしまう。怯えて呼吸が荒くなるスヨンだったが、突然大きな音がし、続いてバタバタバタという音が続く、外へ出たスヨンはスミの部屋へ行き布団に潜り込む。
- この時の音をスヨンは《自室へ侵入し布団を引っ張った何者かが、外へ出て扉を閉める音と階段を降りていく音》だと勘違いしているが、実際には母親の幽霊が布団を引っ張っており、音の正体は箪笥が倒れる音と圧迫されたスヨンが手を動かす音だったと考えられる。
その後スミの布団に潜り込んだスヨン。
スミは心配してスヨンに問いかけるが、彼女は頭をふるだけだ。
『夢を見たの?』
『箪笥が怖い?』
『じゃあ何よ』
「外から変な音が聞こえてくるの」
「誰かが部屋に入ってきたの」
冷蔵庫の謎の小包
スヨンの言葉を受け、ウンジュがスヨンの部屋に侵入したと思ったスミは部屋の外を確認しに行く。
書斎で眠る父親を見つけ、念入りに何度も布団をかけ直し、顔を撫でる。
- スミの看病でやつれた父親を労っている。父親はスミが“人間の温もり”を感じられる最後の家族である。(決して父親に恋愛感情を抱いているわけではないだろう)
その直後、ウンジュに声をかけられたスミは口論の末『水を飲みに来た』と言い冷蔵庫へ向かう。
そして水を飲んでいると冷蔵庫の中に異臭を放つ紙の包みがあることに気がつく。
包みを開けたスミは中身に驚いて落としてしまう。
- 小説版ではこれの正体が魚の残骸だとされている。
- 『母親は魚をさばいた後のゴミを冷蔵庫に放置して回りの物に匂いが移るような雑な管理はしない、母親の聖域であるキッチンに生ゴミを放置するウンジュは悪者。』といった内容だった。そう言われてみると左側に魚の頭、右側に尻尾の部分が見える。
- 父親が放置していたか、スミが帰省する前に家にいた本物のウンジュが放置していた生ゴミなのだろう。
部屋に戻ってきたスミにスヨンが訪ねる。
「誰か私の部屋に入った?」
『あの女』
「新しいママ?」
『だけど、なんだか変なの、あの女も変だし、この家も変』
- 何が変なのかと言うと、自分の私物が重複していることと、魚の生ゴミの存こと。スミは父親に原因があることを知らない。
- またスヨンが箪笥に怯えたいることも不思議に思っている。この理由付けとして《スヨンはウンジュを怒らせたがために報復として箪笥に閉じ込められた》という筋書きをし、この後ウンジュの小鳥を殺しスヨンのせいにする。
『怖い?大丈夫だよ、お姉ちゃんが付いてる。私が側にいてあげる』
- そしてこの台詞である。
- しかし、“あの日”の事を想うと悲しい台詞でもある。
この後書斎で目を覚ました父親がスミを気にかけ夫婦の寝室に行くと布団は空になっていて、流れるようなカメラワークでスミの自室へ切り替わる。
- ウンジュ(スミ)がスミの人格に戻っていることを示したカメラワーク
スミの悪夢
自室で眠るスミは『貴方だれなの?』
と譫言のように呟き、悪夢に魘される。
そこで森の映像が度々カットインされる。
白い服を着ているのは母親で、水色の服を着ているのはおそらくスヨン
(この映像では見分けつかないんですけどどっちでしょう?)
スヨンが母親の腕を掴むとその腕から血が滲み、自分の手についた血を見て驚く。
一連の映像の中に、倒れてきた箪笥の下敷きになったスヨンの手が一瞬カットインされている。
- この時の母親の服は病気が悪化していた時の服装であり、さらに背を向けて立っていることから、死に向かっている母親であると推測できる
- この悪夢は、死にゆく母親を助けようとしてその腕を掴んだスヨンの手は、箪笥に潰され血まみれになった、という“あの日”の出来事の暗示なのだろう
母親の幽霊の股から出る手
先程の悪夢から目を覚ました直後、部屋の中でギシギシとした音がなる。
足下に目を向けると女の幽霊がいる。
- 首が吊られているようなポーズから母の幽霊だと推測できる。
母親の幽霊はベッドに登りスミの上に跨がって立つ。
スカートから覗くふくらはぎに一筋の血が流れ、一瞬そのスカートの中から手が出てくる。
- この血は、この後の展開を示唆する生理の経血のように見えるが、股から手が出てくるとなると妊娠を仄めかしているようにも思える。
- 前述した母親流産設の根拠その一
- しかし、あまり考えたくはないが、単に映画の予告用に撮影されたシーンとも考えられる(本編と関係のないシーンが、視聴者の興味を煽る為だけに予告で流れる手法は結構ある)
生理
目が覚めたスミは、指に血がついていることに気づく、布団をまくるとそれがスヨンの経血であることがわかる
生理用品をウンジュの寝室に取りに来たスミにウンジュのが話しかける
「何してるの?生理になったの?」
『私じゃなくてスヨンが』
「スヨンが?おかしいわね、生理になる日が私とピッタリ同じだなんて」
その後自室へ向かう階段を登るスミに違和感が走る
トイレで、スミにも生理が来たことが暗に示されている。
- 三人同時に生理になる演出がどう行った意味合いを持つのか悩みましたが、スミが三重人格である、という視聴者へのミスリードなのだと思います…
- スヨンが幽霊であるということはクライマックスまで視聴者に気づかれたくなかった監督があえてスヨンがスミの人格の一つであるかのように演出したのかと…(私は小説版を読むまでスヨンが幽霊であることに気づかず、スミが三重人格なのだと思っていました)
父親との会話
スミがスヨンと並んで、ウンジュの小鳥達が煩いから『殺しちゃおうか』等と言っていると、父親に話しかけられる。
「スミ、外にいると寒いだろう、大丈夫か?」
『何が?』
「顔色が良くない、具合が悪いのか?」
『別に大丈夫、それより箪笥を片付けて』
「スミ、箪笥の話は二度としないって約束したろ、スミ、お前が怒る気持ちはよくわかる、本当に俺は悪い父親だ」
『それ以下だわ』
- 箪笥の話、一度目はおそらく以前の帰省で話していたのだろう。スヨンが怯えている時にスミは「箪笥が怖い?」と聞いていたため、以前もスヨンが箪笥の幽霊と遭遇する機会があったと推察できる。
- 悪い父親、とは母を自殺に追い込んだことか、もしくはスミがおかしくなってしまったことか、何のつもりで話しているのかが定かではないが、あらゆる視点から見ても良い父親でないことは確かだ。
- ちなみにこのシーンでも父親にスヨンは見えていない。
新たな妄想の筋書き
スミは竹藪を越えた先のビニールハウスに向かう。
残されたスミ(スヨン)が小鳥の異変に気づく、そして顔を左に向け驚いた顔をする。
- スミは今までの不可解な出来事を精算するために、ある筋書きを描いた。それが《スヨンがウンジュの小鳥を殺し、怒ったウンジュがスヨンを箪笥に閉じ込め折檻する》というストーリーだ。
- このシーンは、スミが殺した小鳥をスヨンが見つけたところ。(最後にスミが小鳥を殺すシーンがある)そしてスヨンの左側に現れたのはウンジュを演じるスミだろう。箪笥に閉じこめられた妹を自分が救い出すことで、“あの日”の過ちもなかったことにできる一石二鳥の筋書きである。
遺品の写真に隠された真実
スミを家に残し、森の奥のビニールハウスから母親の遺品を持って帰ってくるスミ。
森を舞台にした悪夢が原因で、今までの帰省で取らなかった行動をとっているのかもしれない
- 最初の誕生日の写真は家族四人だが、翌年の誕生日ではウンジュが増えてる。母親の看病をするためにこの年から雇われたのだろう。
- また、スミの体勢から、このとき既にウンジュへ嫌悪感を抱き、母親と妹を遠ざけようとしていたように見える
- 更に翌年の誕生日、父親は母親と距離を取り、ウンジュは僅かに微笑んでいる
- 母親はドレスも着ないで病院服のような服のまま、やつれた顔をしていることから、病気が悪化したと推測できる
- スミとスヨンは固く手を握りあっている
同僚の集合写真の後にわざわざ二人だけで写真をとるのは、親しい関係であることを意味する。父親の髪色が若々しいことから、二人は若い頃付き合っていたのかもしれない。
- 母親の看病の為と言いながら過去の恋人を家に上げていたことを知り、ここから父親に対する態度が冷たいものに変化する。
- 父親とウンジュ二人の写真の後にも何枚か写真が続くところをみるに、母親は自分の看病をしている女が夫の元カノであったことに気づいていたと推測できる。母親が自殺した理由はここにあるのかもしれない。
遺品の写真を見てるとスヨンが来て、スミは遺品の数々を見せる
『スヨンこれ見て』
「ママの?」
『うん、他にもあるわよ』
「あ!ママだ!タリタクム、タリタクム」
『何?それ?』
「ママを呼ぶ呪文」
『誰に聞いたの?』
「ママに聞いた、これ貰ってもいい?」
- この呪文はなんだったのか、小説読んでもわからなかったです。しかしこの呪文によって、母親の幽霊が頻出するようになったとも考えられます。
また、この時スヨンの腕に痣や傷があることに気づくスミ。
- スミが森へ行っている間にウンジュ(スミなのだが)がスヨンを折檻した、とスミ思っている。
スミによる糾弾
ウンジュ「何?」
スミ『よく平気だね』
「悪いことをしたら、罰を受けるのは当たり前じゃない?』
『パパも知ってるわけ?』
「パパに助けてもらいたいなら、呼んでもいいわよ?私が呼ぼうか?」
「座りなさい!ママの前でも…御行儀悪かったの?!」
『黙りなさいよ』
「お前たちの…母親はあたしよ!世界ひろしと言えども、お前たちが母親と呼べるのはあたしだけ!いい?!死んだママを恋しがってメソメソ泣いたって無駄なものは無駄。辛いでしょうね!でも、いくら辛かったってこれが現実なの!おあいにく様、世の中そんな甘くはないのよ!あたしだって我慢に我慢を重ねてお前たちと暮らしてるんだからね!!」
髭を剃っていた父親が怒鳴り声に気づく
「私はね!貴女たちのパパに○○れて、ここに来たんですからね!私だけを悪者にするのはやめて頂戴!」
『何を言うのよ!スヨンをあんな目に合わせて!○○私は許さないからね!』
()○○の部分は父親が蛇口を閉める音で聞き取れなかった…)
「何?なんで下に降りてきたの?」
急にウンジュのアップ、お互いヒートアップしていた筈なのに、突如冷静にいい放つ。
- この台詞は“あの日”スヨン(実物)が箪笥に押し潰されている時スミの台詞『何しに上に来たの?パパは下よ』と被る。
「またその話を蒸し返すの?
貴方まだ、病気が治ってなかったのね?」
衝撃を受けた様なスミの顔のアップ。
- 自分が演じてるウンジュと過去に対峙していたウンジュが混ざり会って混乱している。
キッチンの隅で疼くまり泣いているスミに父親が話しかけようとする。
『触らないでよ!離して!』
「どうしたっていうんだ」
『聞かなきゃわからない?汚い手で私に触らないで!』
「なあスミ、聞いてくれ」
『話なんかもう聞き飽きた!』
「何もかもお前の誤解なんだ、頼むから現実を受け入れてくれ」
『どうしていつもいつも、私だけに理解しろっていうの?パパほんとにわからない?』
「ああ本当にわからない」
「俺にもわからないことがある、だからそれが何か話して欲しい。ちゃんと説明して欲しいんだ」
『説明したら何かが変わるの?』
「なあスミ、頼む、頼むから目を覚ましてくれ
こんな毎日が続いたら…また具合が悪くなる。」
『え?』
- 先程のウンジュとの口論に加え、父親にも自分が病気であることを突きつけられた。今まではウンジュに体調はよくなったの?といった台詞スヨンに対してを言わせたり、食卓でもウンジュが薬を飲んでいたりと、自分自身が何かしらの病気であることを認めずにいた。
- そしてここで自分が病気であることを認める。
『わかった。じゃあこれから先に起こることと、パパが招いた忌々しいことは責任とって。』
- つまり、自分がおかしいことを認める代わりに、ウンジュが家に来てから家族がバラバラになり母親が自殺した事と、それによりスヨンが死んだこと、
自分がおかしくなったこと、そのすべての責任は父親が取れと言っている。
『話は終わり、電話がなってる』
電話は恐らくスギョン夫婦から
スギョン夫婦との食事
豪華な食卓と音楽を用意し、上機嫌で夫婦を迎え入れたウンジュ、弟と思い出話を語る。
しかしスミがウンジュを演じているので話している架空の思い出話であるためソンギュ夫婦は押し黙っている。
テンション高く話すウンジュ。
「覚えてる?そうだったわよね?ヤダ覚えてないの?答えてよ。もちろん覚えてるわよね、当然よね」
「いや、覚えてない」
「ええ?」
「そんな記憶、僕にはない」
「どうして覚えてないの?どうかしちゃったの?」
ご機嫌だったウンジュが真顔になる。
実際に変なのはスミである。
叔母が倒れて幽霊を目撃する
スミの奇行に恐怖を感じてか、
ソンギュの妻が唐突に発作を起こす。
おそらくあまりの状況に気迫され持病の発作が出た。(小説版の設定)
ソンギュが慌てて持参していたであろう薬を飲ませる。
地面に仰向けに倒れた妻は苦しみながらも、キッチンの下の隙間の何かに気づく。
もがき苦しむミヒを見ていたウンジュ(スミ)はスヨンの死に際の姿と重なったのか悲鳴を上げる。
帰りの車の中ではソンギュに
「貴方、私あの家で変なものを見た…流しの下に女の子がいたのよ」
と告白する。
ウンジュも幽霊を目撃、髪飾りの伏線
一人でリビングに取り残されたウンジュ(スミ)
キッチンの扉が独りでに空き、中を覗くが何もない。
キッチンの棚と床の間を覗くが何もない。
- 緑の服の女性が見きれてる
- (母親の幽霊かスヨンの幽霊かわからない)
鳴き声のような音がリビングから聞こえ振り向くが何もない。
視線をキッチンの下に戻すとスヨンが死んだ日に付けていた髪飾りが落ちている。
それを取ろうとすると流し台のしたから何者かの手が出てくる。
手を掴まれたことに驚いて振り替えると緑の服の女が立っており、ウンジュは二度目の悲鳴を上げる。
- スヨンの部屋に飾ってあった写真のドレス
父親とスミ(ウンジュ)の会話
悲鳴を聞いて駆けつけた父親はウンジュに薬を渡した
ウンジュ「一緒にいてよ」
父親「どうして?」
「変だもの」
「何が変なんだ?」
「ここにあの子達が来てから変なことばかり起きるじゃない」
「何バカなこと言ってる」
「だって見なかったの?」
「環境が変わったせいだ、休めば良くなるさ」
「いいえ、この家には何かあるのよ」
「様子を見てくる、休んでろ」
- 予期せず出現した幽霊のせいスミ自身混乱している。
その後、父親がキッチンに行っても何もない。
しかし、鳥が死んでいた。
その様子を見ていたウンジュは激昂してスヨンの部屋へ向かう。当初のシナリオ通り、ウンジュにスヨンを折檻させるため。
「開けなさい!」
何度も叫んでドアノブを捻るが開かない、そこで書斎の引き出しをひっくり返し鍵の束を見つけるとそれを使ってスヨンの部屋に入る。
- 箪笥からスミを引き離すため父親が鍵をかけていた
ウンジュによる折檻
スヨンの部屋のテーブルにはウンジュの部分が切り離され顔がペンで塗りつぶされている写真を見つける。
ウンジュはさらに怒りがこみ上がり、怒鳴り散らかす。
スヨンに手を出そうとして布団に乗り上げると妙な音がした、布団をまくると小鳥が布団の中で死んでる。幽霊のスヨンも驚いている。
二人は揉み合いになり、お仕置きと称してスヨンは箪笥の中に入れられ鍵を閉められる。
スヨンは絶叫しながら箪笥の扉を叩き続ける。
スミが自室で目を覚まし、部屋の外を覗くと階段を降りる人影が見える。
スヨンの部屋に向かい、箪笥を開け、驚いた顔をする。
『スヨン!』
『スヨンごめんね、何も聞こえなくて』
『ごめんねスヨン、ごめんね』
スミはスヨンを抱き締める
『こんなことはもう二度とさせないからね』
姉の肩越しにこちらを見るスヨン
- 何も聞こえなくて、というのはスヨン(実物)が死に際にスミに助けを求めた声のことでもあるのか、妄想と現実がリンクしてる
- スヨンがこちらを見る意味深すぎるシーンは「私をこんな目に合わせたのはスミなのにね」という目か?
現実に死んでいた方の鳥を埋める父親のカット。この後スヨンと部屋へ向かう
- その表情から今までの帰省より、事態が深刻であることが読み取れる
人格の統合
スミ(スヨン)を慰めるスミ。
現実に死んでいた方の小鳥を埋めた父親がスヨンの部屋に入ってきて、顔が塗りつぶされているウンジュ(実物)の写真を見つける。
「ウンジュのことだ、どうして彼女におかしなことをする!理由を教えてくれ!一体なぜ…」
- おかしなこと、とは写真を塗りつぶしたことか、もしくはウンジュ(実物)の鳥に対して行ったことか
- ウンジュ(実物)の話をする父親と、スミ(ウンジュ)の話をするスミ。絶妙にすれ違っていく。
『本当にわからないわけ?』
「わからないから聞いてるんじゃないか!」
『理由はあの女に決まってるでしょ!』
「だから彼女が一体何をしたっていうんだ」
- 父親はウンジュ(実物)がスヨン(実物)を見殺しにしたことを知らない。
『何って虐めてるのよ』
「何?」
『聞こえなかった?あの女、スヨンに虐待してる。
あの女がスヨンを、箪笥の中に閉じ込めお仕置きしたのよ!』
「おいスミ、そんなことを言うな!!」
『なんでそんなこと言うのよ、かわいそうにスヨンは凄く怖がってるのに』
スミ(スヨン)の腕を掴み揺する
「もういい加減にしろ!スヨンは死んでるんだ!」
『………え?…まさか…』
「スヨンはもう死んだんだ。しっかりしろスミ、…早く気が付いてくれ、な?」
『死んだなんて嘘。』
- スヨンは自身が死んでいると認識したのか、これ以降姿を表さない
- その一方でスミはスヨンの死を受け入れられず妄想は激化していく。今度はウンジュがスヨンを叩きを殺したという妄想を始める。この時点でスミは完全にウンジュである自分を認識できずにいる。
電話
「来てくれるか?俺はお手上げだ。どんどん酷くなる一方だ、迎えに行くから着いたら電話をくれ」
- 前回と同じくウンジュ(実物)への電話
真実と妄想の狭間へ
赤い血の滲んだ袋を引きずるスミ(ウンジュ)。
袋を棒で叩き始める。
- 袋の中身はスヨンという設定だが実際は人形
直後、スヨンの悲鳴に合わせ箪笥が倒れ、その下から手がバタバタ動くカット
- スミ(実物)の死を妄想したことで、本来の死因が頭をよぎった?
自室のベッドで目がさめる。
ドアの下にメモ書きには、
「スミ、少し出かけてくる、午後に帰るから扉の鍵は必ず閉めておくように頼む」
と書かれていた。
- 父親はウンジュ(実物)を迎えにいった
スヨンの部屋に行くが扉が開かない。
上を見上げると扉に釘が何本も刺さってる。
- スヨンの部屋の鍵をスミに取られたことから、父親が封鎖したのだろう
スヨンを探し回っているとお姉ちゃんとスミを呼ぶ幻聴が聞こえる。
急いで玄関の方へ向かうスミだが足元に血の跡を見つけ後ろ向きにそれを辿る。そして玄関の前にあるあの袋を見つける。
『スヨン…』
半狂乱になり袋の口を開けようとするが開かない。
キッチンでハサミを探すが見当たらない。
- スミが手に出来る所の刃物の類いは父親が隠したと推測できる
ヤカンが鳴って、水(薬)を飲む継母のシーン。
その後自分が薬を飲んでるシーンが一瞬カットインされる。そしてスミが袋を叩いてるカット。
- ウンジュは自分だったという現実がフラッシュバックした。
スミが目を空けるとさっきあったはずの袋がなくなっていた。
残された血の跡を辿ると今度は書斎の箪笥へ繋がっていた。
箪笥の中の袋に手を伸ばすと袋が動きだし、驚いたスミは悲鳴をあげる。
書斎の引き出しからハサミを探しだし、袋を切ろうとしたところで、ヤカンを持ったスミ(ウンジュ)が登場する。
「お前の家族にはもううんざり家族全員邪魔なのよ」襲いかかるウンジュに
スミはハサミで抵抗する。そして揉み合いになり頭を打って気絶する。
スミを引きずるスミ(ウンジュ)、スミが地面に転がされ画面は暗転する。
スミが目を覚めると床の血が消えていくのが目に映りまた暗転する。
- スミ視点の映像
- 暗転は、妄想の世界と現実世界の切り替わりを表現している
- スミの意識がこの時妄想から外れたが、次のシーンではまた妄想がはじまる
人形引きずるウンジュ。
奥にはスミが倒れたままである。
ウンジュが手を離すとごとりと落ちる音。
地面に転がされたのは人形ではなく、またもやスミ。
- スミが混乱しているため、映し出される映像も荒唐無稽なものになってきている
スミが見上げるとウンジュ
「一体なんで、私たちはこんな風になってしまったの?お前にはわからない?私が言ったこと、覚えてる?
いつかこんな日が来るって言ったでしょ。お前は、本当の恐怖を知ってる。
どうしても忘れたいことがあるのに、消してしまいたいことがあるのに、忘れることもできないし、消すこともできない。
それは、一生付きまとう、亡霊のように。」
『お願い助けて』
「ええ、あたしが助けてあげる。これで終わりにしましょう」
スミの頭上に人形を持ち上げるウンジュ
- スミは真実を直視することも、二重人格を演じることも拒んだ。完全に独立した人格として存在する二人、人格がウンジュに統合されようとしてる
- が、それは帰ってきた父親に中断される。
人形を持ち上げたまま、扉の開く音でハッとするウンジュ。
父親が帰ってきた。
父親が見る廊下に血はない。
廊下この先に目を向けると割れた人形と横たわるスミ
統一された人格
父親は慌ててスミを書斎のソファに運ぶ。
薬を取りに薬棚へ向かうと、薬だなの横にある箪笥に違和感を覚える。中を見ると袋と人形が入っていた。この人形はおそらくスヨンの部屋にあったもの。
薬をスミに渡そうとする父親。
この時スミは完全にウンジュの人格となっていた。
「スミはどう?ねぇ?」
「もうたくさんだ、俺ももう疲れた。薬を飲め、飲めば良くなる。」
- 目覚めたスミはウンジュだった
ドアの外で物音がして目を向ける二人。
チャイムの音がし、父親が出ていくと入れ替わりに本物のウンジュが入ってくる。
ウンジュ(実物)を見たウンジュはスミに戻る。
- ウンジュ(実物)を見たので、ウンジュの人格が消された。
そして自らがしてきたことのフラッシュバックが始まる。
小鳥を殺してウンジュにスヨンを虐めさせたこと、薬を飲んでいたこと、車から一人で降りてきたこと。
我に返り自分の手を見下ろすと、薬を持っている。
スミは目を見開いたまま、勢いよく薬を飲み込んだ。
- 真実を受け入れる覚悟を決めたからか、逃げ道(ウンジュの人格)がなくなったからか、スミはスミの人格として初めて薬を飲んだ。
精神病棟で
父親が医師と話している間、本物のウンジュはスミに会いに行く。
「スミ、大丈夫?もう終わったのよ、ゆっくり休んで頂戴、じゃあ元気でね、また会いに来るわ、じゃあまたね、行くわ」
笑みを見せ極めて優しげに話しかけるウンジュ。
去り際にスミに手を掴まれる。
「スミ、どうしたの?離して?離してったら」
- スミは正気を取り戻したことで、ウンジュ(実物)がスヨン(実物)を見殺しにした可能性に気がついて手を掴んだ
背後にいる父親に目をやり、スミに対して笑顔を作るウンジュ
- 父親の前だから本性を隠してる
「お願いだから離して!」
手を振りほどき、またも父親のいる背後に目を向ける。
自身の髪を撫で付け、動揺を落ち着かせてから立ち去る。
- スヨン(実物)を見殺しにしたことをばらされるのではないかと危機感を抱いているのだろう
- 病室に一人残されたスミは“あの日”のことを邂逅する。
- 自室で泣くスヨンのもとに母親が現れる。
- 泣いてるスヨンを撫でながら涙を流す母親。
- 口笛の音
- スヨンと口ずさむスミ
- しかしスヨンは口笛を吹けないのでこれは母親が吹いている口笛なのだろう
ウンジュの結末
家で一人、戸惑いを隠せずにいるウンジュ。
二階から聞こえた物音の正体を探るため、スヨンの部屋へ向かう。
スヨンの部屋に行くとカーテンの奥にリボンの様なもの垂れていてそれがサッと消えていった。
ウンジュがカーテンを開けても何もなかったが、その瞬間部屋の扉がしまり電気が消える。
振り替えると箪笥が独りでに開くのが見えた。自らの身体を抱き締めながら恐る恐る箪笥を見ると布団の隙間からまたリボンのような物が垂れている。
引き抜こうとするとその隙間から母親(幽霊)が出てくる、その時、赤子の鳴き声のようなものが聞こえる。
そして布団の隙間から透明の粘液のようなものが滴っているカットイン。ウンジュは悲鳴をあげる。
- 粘液は羊水?赤子の泣き声は?ウンジュの背後に子供の人形が並んでいるのも意味深。またも妊娠を仄かしているのか?結局謎のままだった。
- 母親が精神を病んだ原因は流産にあり、それを引き起こしたのが看護師のウンジュでありその後様々な要因が重なり自殺したというのは筆者の深読み
あの日の真相
スミによる回想
ウンジュが弟夫婦を招いた食事の席でスミはウンジュに反発し席を立つ、スヨンもお粥を流しに捨てる。
- スヨンの髪にはあの髪飾りがある。
その後自室に向かいベッドで泣き始める。
- この時ウンジュにぶたれ、髪止めが落ちるシーンがあったらしいが、編集でカットされてるらしい
ベッドに腰掛けスヨンを慰める母親。
目覚めるとそこに母親はいなかった。
部屋を見回すと箪笥の扉が独りでに開くのに気がつき、箪笥を明けると母親が首を吊って死んでいた。
叫びながら母親の体を揺らしていると、箪笥が倒れてきてスヨンは押し潰されてしまう。
- このとき箪笥から薬瓶が落ちてくることから母親が病気だったということが裏付けられる
大きな物音に驚く家族、ウンジュが様子を見に行くと箪笥の下でもがき苦しむスヨンがいた。
ウンジュは何も見なかったことにして階段を降りようとするが、再びスヨンの部屋の方向へ歩きだす。
そこでスミが部屋から出てくる。
ウンジュは今二階に上がってきた体でスミに話しかける。
「何か音がしなかった?」
『上に何しに来たの?パパは下だけど』
- この台詞は映画中盤のスミとスミ(ウンジュ)の口論の台詞と被る
「それはどういう意味?」
『母親面はやめてよね。頼むから余計なことはしないで
、どいてくれない?私でかけるの。』
ウンジュはスミの態度に腹を立て腕を掴んで引き留める。
「お前は、この瞬間を一生後悔するかもよ、忘れないで」
『その顔をみることが最大の後悔よ、出きるだけ離れていたいの、わかる?』
スミは掴まれた腕を振り解く。
- この時の台詞で、ウンジュはスヨンが死にかけていることを知っていたのでは、とスミに疑問を与えた。
スミは父親が呼び止める声も無視し家から出ていってしまう。
そして、あの物音が何だったのか、気になったようでふと立ち止まる。
スヨンのカットが入る
「助けてお姉ちゃん、お姉ちゃん」
家を振り返ると二階のベランダにウンジュ姿が見え、また歩きだす。
これが映画のラストシーンだった。
オープニングではスヨンと二人で家から出て湖に向かったが、エンドロールで桟橋にいるのはスミだけ。悲しい映像が続いた。
以上で解説を終えます。
過去一番の長文でしたか、お付き合いくださって、本当にありがとうございました!
また箪笥には小説版もあり、映画では分かりにくい謎が解明されると言われてます。ご興味あれば是非そちらも御試しください。
また、『箪笥』が面白かった、という謎解き映画好きな方にはこちらの映画もおすすめしております!
badendnihaimigaaru.hatenablog.com
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