映画『ヴィレッジ』考察。伏線職人シャマランの手腕が光る傑作。
今回は『シックスセンス』で一世を風靡した、M・ナイト・シャマラン監督映画『ヴィレッジ』をご紹介します!
未視聴の方向けの魅力紹介と、視聴済みの方向けの考察解説など!
シャマラン監督の伏線&回収は最早職人技の域です、是非見ていただきたい!
作品情報
ヴィレッジ(2004) The Village
上映日:2004年09月11日
製作国:アメリカ
上映時間:108分
ジャンル:ミステリー、スリラー
監督 / M・ナイト・シャマラン
脚本 / M・ナイト・シャマラン
出演者 / ブライス・ダラス・ハワード
ホアキン・フェニックス
エイドリアン・ブロディ
ウィリアム・ハート
シガニー・ウィーバー
ブレンダン・グリーソン
チェリー・ジョーンズ
あらすじ
1897年、ペンシルヴェニア州のとある深い森の中に存在する小さな村は周囲から孤立していた。村では皆が家族のような暮らしをしていたが、その暮らしを守るために作られた奇妙な掟を、村人たちは守らねばならなかった。しかし、ある日のこと盲目の少女が、恋人の命を救うためにその掟を破ろうとしていた。
シネマトゥデイより引用
こんな方にオススメ!魅力をご紹介!
- 謎解き映画好きの方
ほどよいミステリー、ミスリードや伏線の見せ方が兎に角秀逸。
しかし、どんでん返し映画ではないのでご注意を。
- ホラー演出が苦手な方
怖い場面は少なく、演出もマイルドです。
グロテスクな描写もなく上品なホラー。
びっくりグロホラーを求める方は別映画を…!
- ロマンチックな映画好きの方
ラブロマンスの演出が美しくてロマンチック、おせっせシーンがないため家族とも見れる。
若干少女マンガ的なので苦手な方は苦手かも、しかしメインはミステリーなのでご安心を。
- 素朴で美しい映像に胸打たれたい方
自給自足をする素朴な村人の情景は単純に美しいです。
差し色の使い方もセンスがあって○。
- M・ナイト・シャラマン監督好きな方
同監督で有名な『シックスセンス』ほどの驚きはないです。
しかし本作はミステリーが若干弱い分、ファンタジーやラブロマンス要素が強めになっており、バランスのいい映画に仕上がってます。
監督の独特なカメラワークや色使い、映画の根底にある皮肉に魅力を感じる方には大いにオススメをします。
シンプルな演出の中に滲むセンスの良さには脱帽です!
謎の解説
まず最初のシーンで視聴者は騙されるのですが、葬儀のシーンで映る墓石にはしっかりと「ダニエル・ニコルソン 1890-1897」と刻まれています。
クライマックスの守衛室では職員の読む新聞に「2004年7月」と印字されているため、100年以上の歳月を偽って村では自給自足の生活をしているのです。
では何故そんなことをしているのか?
この村でくらす大人、所謂年長者達は皆過去に悲しい経験をしていました。
お金や争いが原因で親族を街で殺されていたのです。
主人公の祖父は金儲けに長けていて、莫大な資産を築いていましたがそれをよく思わない人間に殺されています。
それらの事件を嘆いた家族が集まり、主人公の父親が主人公の祖父の資産を使い、森の中に村を作って暮らすことにしたのです。
外界から完全にシャットアウトするため、外壁を築き、航空写真を禁じ、誰の侵入も許さぬよう警備隊を雇い警備させていました。
すべては、紙幣も犯罪もない無垢な理想郷を作ることでした。
それでは映画の中で描かれた細かい謎を考察していきましょう。
秘密の箱
かつて街で暮らしていた時の記憶(写真や事件の記載された新聞など)を封じたのがアイヴィーやルシアスの家にあった箱です。
怪物
子供達から外界を遠ざけるために恐ろしい怪物を作り出し、森から遠ざけようとした。
各年長者が衣装を隠していて、主人公の父親は使われてない小屋に、ノアの両親は家の床下収納に隠していた。
(これはノアではなく、年長者の誰か)
家畜
最初に殺されていた家畜はアイヴィーの父親が殺したもの。
発見された後、子供達に怪物はどんなものかを問いかけていたので、教育のために殺したものだと考えられる。
ルシアスが夜家に訪ねて来たとき、「眠ってしまってすまない、最近夜眠れてないんだ」というようなことを言っていることからも、子供達が眠った後、家畜を用意していたのだろう。
しかしアイヴィーの婚約パーティーの日は、ノアがアイヴィーの父親がしてきたことを真似をして家畜を殺した。
父親が娘の晴れ舞台で事件を起こすことは考え難く、家畜が死んでいたと子供達から知らされた父親は「そんなはずはない」と口走っていた。
ノアは、片想いだったアイヴィーとルシアスの婚約パーティーをめちゃくちゃにしようと考えたのだろう。
ノアの死
アイヴィーは森の中で出会った怪物がノアであることを知らずに殺したことから、年長者達は村の生活を続けるため「ノアは怪物に殺された」と嘘をつき続けることを決めた。
演出の妙を再発見する、感想!
良い、とても良い。
最初の10分で、視聴者を完璧にミスリードさせるシャラマン監督すごい…!
結末には「してやられたァー!」と笑うしかなかった、何とも鮮やかな手腕、見事。
そしてまた、カメラワークが良い!
皮を剥がれた家畜を写さず、それを見る村人とハエの羽音で視聴者をゾワゾワさせてくる、たまらん…!
ノアがルシアスを刺すシーンも緊張感がありますよね、
(この静かなカメラワークが逆に衝撃的…!)
また、定点で映像を写すのもセンスが光ってた。
ルシウスが刺された後、家の奥から外に繋がる扉を写し、盲目の主人公が家に入ってきて奥に転がる婚約者の体に蹴躓くまで、じっくり写していて、
ただ定点で写しているだけなのにとんでもなくゾワゾワさせるやん…と。
まことにけしからんカメラワーク…!
(これ、すごくないですか…!?)
全体を通して奥行きを感じる映像、視聴者を巧みにミスリードする演出、クライマックスのどんでん返し、全てが一級の芸術品でした…!
また、個人的にはどんでん返し映画としてこの映画を見てほしくなくて、魅力の項目で「どんでん返し映画ではない」と記載しました。
どんなどんでん返しがくるか、ということに頭を使いながら見てしまうと、シャマラン監督独自の演出など、映画の肉感が感じられなくなるからです。
「先が読めてしまった」なんて感想で終わらせてほしくないんですよね、もったいないから!
というわけで、今回はここまでです!
シャマラン監督は個人的に好きな監督なので、皆さん見てくださると嬉しいです~!