映画『シャイニング』裏話、考察、感想。ラストシーンは製作陣の確執から生まれた。

スティーヴン・キング原作、
スタンリーキューブリック監督映画。

いまさらはあるが、本作が名作たる所以を再確認していく。
また本作は原作者と監督の裏話を知るとよりストーリーを深く理解できるためご紹介させてもらう。


シャイニング (字幕版)

シャイニング (字幕版)

  • 発売日: 2013/05/16
  • メディア: Prime Video




魅力

・冒頭から何か悪い事が起こりそう、と視聴者に訴えかける演出。キャラクター性が破滅を物語っていて、緊張感を持って映画を見れる。

・音楽、映像、キャラクター全ての要因が不気味に恐怖を掻き立てる、最高級のホラー。
本能的に訴えるキューブリックの撮影技術と美的センスは一級品。恐怖に浸りたい方オススメです。

・恐怖の分類としてはサイコスリラーとオカルトのいいとこ取り。
どっちかが好きなら見て損はない。

・しかし狂気的な演出ばかりが目立ち、スティーヴン・キングの良さである、登場人物の奥深さや悲劇が起きるまでのギャップのようなものはあまり感じられない。スティーヴンキングファンは期待を裏切られる映画かもしれない。



監督と原作者の裏話

キューブリックがキングの怒りを誘った逸話はあまりに有名である。
映画を『エンジンの無いキャデラック』とまで言わしめたキングの怒りの理由は以下の通りである。

原作改編
キングは自分自身を主人公として小説を描き、小説のラストでは家族を愛してたが故にホテルのボイラー室を操作しホテルもろとも爆破した。その自己投影である父親が狂った人間として家族を殺そうとするのだから、キングにとってはたまったもんじゃない。

死語の世界への価値観の違い
キューブリックはキングに対して「死後の世界を信じるか」と問いかけ、死後の世界を信じ、そのために人は自らの行動を省みる、といった思想を持つキングに対して「楽観的だ」と言う。
キューブリックはシャイニングなどの超能力は信じてもオカルトを信じない。
その思想の違いが映画に現れ軋轢を生んだ。


考察

この映画にはオカルトとサイコスリラー、二つの恐怖が内在している。

つまり、一つは母親や息子が見る、ホテルの記憶である“幽霊に対する恐怖”
もう一は父親が見る、狂った妄想としての“人間の狂気に対する恐怖”

視聴者は幽霊を信じていようがいまいが、どちらの目線でも楽しめる映画になっているのだ。

しかし、やはりオカルトを信じないキューブリックが作っているだけあって、視聴者は父親に恐怖を感じるよう作られている。
父親に関しては一つを除いて、オカルトシーンが妄想としても捉えられるようになっている。
“幽霊が見えるより人間である事の方が恐ろしい”という現実を突き付けられ、人間である我々視聴者はぞわぞわする。

主人公は閉鎖的な環境下で自分の妄想の世界に入り込み、自分な世界を邪魔する家族さえ疎ましく思い“しつけ”という蛮行に走る。
香り付け程度のダニーの超能力や、終盤助けに来たコックのハロルドがすぐ死ぬことから、『オカルトはお呼びでないんだ!』というキューブリックの主張を感じる。
また死後の世界なぞ存在しないと主張するキューブリックだが、ラストシーンでジャックは今生より前、ホテルの支配人をしていたと暗示させる写真を写している。
これは『死後の世界はないけど輪廻天性なら信じる、悪い行いをすると来世で報いを受ける』というような輪廻転生説を提示してるように私は感じた。
この写真はストーリーに直接関わるものではないが、キューブリックからキングへの“歩み寄り”であり“妥協案”のような意思を感じられる。

感想

ちなみに、ペットセメタリー原作小説には同僚から遊びを断った主人公が「“勉強ばかりで遊ばなければ、ジャックはばかになる”っての、知ってるでしょう?」
と言われる。
本作でのキューブリックオリジナル演出である文言を、ペットセマタリーへ逆輸入しているのだろうか?

この後主人公は遊びに行くんだから、『俺の小説の主人公はもっと人間味があるんだ』というキューブリックへの嫌味みたいで、これもこれで可愛らしいですよね、
私の個人的な見解ですが。




次回『シャイニング』の続編映画、“ガソリンの入ってないキャデラック”と(私から)称される『ドクタースリープ』を紹介する。
まだ見てない方も、ネタバレ記事ですが是非どうぞ。